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松永 武; 長尾 誠也*
Humic Substances Research, 5/6(1), p.19 - 33, 2009/00
チェルノブイリ事故に由来するプルトニウムについて、事故影響を受けたウクライナの土壌環境並びに水環境における挙動をレビューした。チェルノブイリ由来プルトニウムでは、環境に放出された燃料粒子の溶解がその環境中での移動の最初の過程になっている。溶解の後は表面土壌に固着して、浸透能が少ない挙動を示した。化学相分別による研究に基づくと、土壌環境で見いだされた不動性は土壌有機物へのプルトニウムへの親和性にあると考えられる。不動性の性質は、ドニエプル川における河川水によるその運搬においても見いだされた。湖水中では、腐植物質と推定される溶存有機物が溶存態プルトニウムの安定化に寄与していると考えられる。
田中 忠夫; 向井 雅之
Humic Substances Research, 5-6(1), p.35 - 43, 2009/00
環境中に存在するフミン酸などの腐植物質は多くの陽イオン性金属元素と錯体を形成することから、放射性廃棄物の処分によって環境中へもたらされる放射性金属元素に対しても環境中移行現象に影響を及ぼす可能性が指摘されている。本検討では、腐植物質が存在する環境を想定し、多孔質媒体中を移行する陽イオン性放射性核種の移行に及ぼす錯形成の影響を解析した。解析においては、陽イオン種と錯体種の間での化学形変化を瞬時平衡反応あるいは一次の速度依存反応とみなした。数値解析結果は、地質環境中における放射性核種の移行に及ぼす腐植物質錯体形成の影響を具現化した。腐植物質共存下での放射性核種の移行性は、陽イオン種と錯体種の分配係数の大小関係によって支配されることを示した。また、瞬時平衡反応系における錯体の安定度定数あるいは錯形成反応における速度定数が放射性核種の移行に大きく影響することを示した。
長尾 誠也*; 坂本 義昭; Rao, R. R.*; 藤嶽 暢英*
Humic Substances Research, 5-6(1), p.9 - 17, 2009/00
湖水,浅層及び深地層地下水から分離精製した腐植物質存在下における砂質試料(砂,凝灰質砂,砂岩)に対するNp(V)の収着挙動をpH5-6,イオン強度0.01M,腐植物質濃度0-154mg/lの条件でバッチ法により調べた。その結果、浅地地下水腐植物質存在下におけるNp(V)の収着は、砂凝灰質砂砂岩の順に大きく、砂質試料の鉱物組成により異なっていた。また、5種類の腐植物質存在下における砂岩試料へのNp(V)の収着を調べた結果、塩水系深部地下水の腐植物質を除き、湖水及び淡水系浅地層地下水腐植物質の脂肪族炭素の存在割合とNp(V)の収着量には正の相関関係が認められた。これらの結果は、弱酸性のpH領域で、地下水腐植物質は砂質試料のNp(V)の収着を支配する要因の1つであり、その影響は砂質試料と腐植物質の特徴に依存することが明らかとなった。